ウィルヘルム、きみはこんなことを言っていたね。
人間に幸福をあたえるものが、
一方では不幸のみなものとになる。
きみはそんな人生を歩んできたのかもしれないが、正直、ぼくには意味がよくわからなかったんだ・・・
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そう言えば、ぼくの父も生前、「慌てる乞食は貰いが少ない」とよく漏らしていたことを思い出した。きみの言うところの、『人間に幸福をあたえるもの』があったとして、慌ててそれを貰おうとしても、幸せにはなれないってことだろうか。
やっぱりぼくにはよくわからない。
ただ、わかっていることは、人間は欲望のかたまりだということくらいだ。
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予測と現実の間
きみは、予測と現実の間には大きな隔たりがあると感じたことがあるだろうか。ぼくだけではない。人間はすべて、希望に欺かれ期待に裏切られるのだ。
ウィルヘルム、生前の父の言葉についてじっくり考えてみたんだ。ぼくの出した結論は、つまりこういうことだ。欲を前面に出してはいけないということだ。
じつは昨夜は支部の稽古会だったんだ。
ぼくは攻めた。攻めた。だがしかし、動いてくれないんだ。そして、動くと思い込んで打ちに行ってしまうんだ。完全な無駄打ちなんだ。どうしてこんなことが起こるのか。予測だ。予測が大きく外れることがあるんだ。
現実は厳しいものだ。甘い予測と現実との間には、ベルリンの壁以上の大きな隔たりがあるらしい。きみもそう思っていることだろう。予測をすることは大事なことだとは思う。しかし、予測だけで動くのはじつに浅はかだ。それでは不測の事態に備えることはできない。
M先生が言うんだ。
不思議と、苛つくことはなかった。苛つくことがあったとすれば、自分勝手に打ってしまった自分自身の甘さに対してだ。
ねぇ、きみ、きみに約束するが、ぼくは心がけを改めるよ。
常に初太刀のつもりで、じっくり攻めることにする。『慌てる乞食は貰いが少ない』らしいからね。それだけじゃない。たとえ目の前に幸福をあたえるものを差し出されたとしても、欲望のまま慌てて奪おうとするのもやめよう。
でも、それでもまだ不十分かもしれない。どうしても攻めが効かないこともあるだろう。
ウィルヘルム、そんなとき、きみならどうする?
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攻めが効かない
そうだ、昨日、庸玄先生がこんなことを言っていたんだ。払えば良い・・・と。
時にはぼくも払うことはある。だが、それは幼稚園児が咄嗟についた嘘のようなものだ。たとえ相手を打つことができても心まで断つことは絶対にないんだ。そう、絶対に。この世に絶対なんてものは無い。前にきみはそう言っていたが、ぼくの中には絶対があるんだ。
だから、それではだめなんだ。
苦し紛れに払うのではない。一つの戦略として、時には相手の太刀を払うことも取り入れてみるべきかもしれない。それも、一つの攻めなのだ。
ウィルヘルム、相手が動かないなら、動かなければならないように仕向ける必要があるんだ。きみも覚えておくと良い。
母の誕生日
先々週は母の誕生日だった。79歳らしい。すっかり忘れて娘と出稽古に行っていたんだ。妻からのLINEでようやく気が付いた。
だが、それはぼくにとっては仕方のないことなんだ。ぼくよりも先に生まれている人の誕生日なんて、なかなか覚えていられない。なんて言ったら冷たい奴と思われるだろうか。わかったよ、ウィルヘルム、来年はちゃんとスマホのアプリで通知が来るように設定しておくことにするよ。
79歳、運動と言えば週に一度のヨガ教室だけだ。もう、走ったりボールを投げたりなんてことはできっこない。しかし、70代後半でも凄い人はいるもんだ。
43歳から剣道を始めて78歳で七段を・・・
ウィルヘルム、きみもにわかに信じることはできないだろう。
年齢を重ねれば七段も合格できるという考えもわかる。でも、実際はそうではない。鳥本さんはいつまでも諦めずに努力したからこそ実現できたんだ。ぼくもこんなところでぐずぐずしていられない。
きみから何と言われようと、サボっていた筋トレを再開することにするよ。もちろん、慌てずにできることからコツコツと。何せ、慌てる乞食は貰いが少ないらしいからね。でも、今日はちょっと体調が悪いから、明日か、明後日か、明々後日か・・・
ウィルヘルム、また手紙を書くよ。
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