剣道の試合で引き技が決まるようになってきたT君。鋭い打ちができるようになってきたので、もっともっと上を目指して貰いたいと思って助言したつもりですが・・・
どんな方法があるんですか?
勉強しといてください!!
まだ私が中学の頃。剣道を始めて間もない頃は、試合でもよく引き技を使っていました。しかし、引き技を打つ前の相手の崩し方というのはあまり考えたことがありませんでした。レベルが低かったということもありますが、今のように試合の動画を見たりすることもなかったので尚更です。
知っていることと言えば、思いっきり体当たりをして相手の姿勢を崩すということくらいですが、体格差が無ければできません。T君は小柄な男の子なので、どちらかと言うと押されて姿勢を崩されるタイプ。
というわけで、今日は
剣道で引き技を決めるには崩し方が重要!!
というテーマを取り上げてみたいと思います。剣道は柔道やレスリングのように体重別で試合をすることがありません。私も体は小さな方なので、体の大きな相手に鍔迫り合いで押されてしまうこともあります。(過去には女性に飛ばされたこともありました)
しかし、そんな時でも使える崩し方があります。体の小さな剣士達よ!今こそ立ち上がれ!!
SPONSORED LINK
引き技を打つ前の崩し方!パターンを覚えて使い分けよう!
剣道における引き技は、殆どが鍔迫り合いの状態からの打突になります。つまり、引き技を打つ前の崩し方というのは鍔迫り合いの状態で如何に相手を崩すか、そしてそこからどのように打突に繋げるかということですね。
鍔迫り合いというのは中段同士で構えていて間合いの詰まった状態と同じと考えて良いでしょう。つまり、鍔迫り合いの崩し方は基本的に中段同士の時の崩し方と良く似ているということになります。
そう言われても、なかなかピンと来ないかもしれないので、具体的な例を挙げてみましょう。
中段の構え | 鍔迫り合い |
上を攻めて下を打つ | 上を攻めて下を打つ |
下を攻めて上を打つ | 下を攻めて上を打つ |
竹刀を払う | 鍔元を上から押さえる |
竹刀をすり上げる | 鍔元を下から押し上げる |
竹刀を巻く | 鍔元を返す |
何となく似ていると思いませんか?しかし、全てが似ているかと言われると、実は鍔迫り合いの時しか使えない崩し方もあります。それは、直接押す、押してくる相手に対して体を捌くという方法です。
上記のように、色々な崩し方がありますが、相手の精神状態や力の入れ具合などによってそれぞれのパターンを使い分け、引き技を効果的に打つのが良いでしょう。
それでは、引き技を打つ前の崩し方について、もう少し具体的に見ていきましょう。
上攻め・下攻めを使い分けよう!
剣道には「上攻め」「下攻め」という言葉があります。これは中段の時も引き技を打つ時も同じですね。簡単に言うと、フェイントということになりますが、これも一種の攻めと言えます。
但し、注意点として、相手に先を取られている状態でこのような崩し方をしようとすると、逆に隙を見せることになってしまうので、打たれる可能性があります。ですから、常に先を取っている状態であることが重要ですね。
では、まずは「上攻め」について見ていきましょう。
面を攻めて小手か胴を打つ!
上攻めは、上の方にある「面」を攻める(面を打つと見せかける)ことによって、相手の意識が面に集中することで下の方にある「小手」や「胴」への意識が疎かになります。
面を打つと見せかけることで、相手が竹刀で面を避けようとすれば、崩し方としては成功したと言えるでしょう。面を攻めると言っても、正面だけではなく、斜面(右面・左面)を攻めることも有効的です。
もし、上手く攻められない場合には、引き面を見せ技として使用するのも効果的でしょう。鍔迫り合いになったらすぐに引き面を打つということを何度か繰り返すことで、相手は「また引き面を打ってくるはず」と考えるはずです。
そういう精神状態を作り出すことも、剣道における一つの崩し方と言えるでしょう。
では、「下攻め」はどうでしょうか。
引き技でも担ぎ技を使ってみよう!
あなたは担ぎ技を使ったことがあるでしょうか?私は時々使用しています。昨年出場した試合の映像がありましたので、恥ずかしいのですがご覧ください。
実は、引き面は一本にならず、次の出小手で一本を取りました。(笑)
竹刀を左側にほんの少し担ぐ動作をすると、相手は「小手を打ってくる」と反射的に竹刀で小手をかばう場合が非常に多いと思います。当然ながら、その時は面ががら空き状態です。すかさず引き面を打ちましょう。
担ぐ動作は大きく担いだり、小さく担いだり、担いでから打突までの時間を調節したり、色んなパターンを試してみて、あなたに合った使い方を見付けてみてください。
また、胴を攻める(打つ)方法もあります。下の方に位置する胴を攻めることで、上に位置する面に隙ができる場合があります。こちらも併せて使用してみると良いでしょう。
では、次に鍔迫り合い状態で直接力を加えてみるとどうなるのか考えてみましょう。
相手の腕に直接力を加えてみよう!
木刀による基本技稽古法の基本4を思い出してみましょう!
鍔迫り合いになった後、掛かり手は元立ちの鍔元を押し下げるという動作があります。その後、元立ちは押し返して手元を上げるという決まりになっているのですが、この崩し方というのはとってもポピュラーですよね。
これは何も引き技を打つ時に限ったことではなく、中段の場合でも似たような崩し方ができます。例えば、表から竹刀を払うと、払われた方は剣先を元の位置に戻そうとしますよね。しかし、元の位置を超えてしまうことが多いのです。
つまり、表から竹刀を払っているのに裏側の小手に隙ができるということになります。これと同じで、鍔元を押し下げることによって、元の位置に戻そうという力が働き、結果としてそれ以上に拳が上に上がってしまうという現象です。
こうなると、胴に隙ができるので、簡単に引き胴を打つことができますよね。(基本技稽古法については下のリンクをご覧ください。)
同様に、鍔元に力を入れ、相手の拳を左右に振ることで逆方向に隙ができることがあります。つまり、鍔迫り合いの状態で左側(自分から見て)に押すことで、跳ね返ってきたところに引き小手を打つことができますよね。
逆に、右側に押すことで拳が跳ね返ってくると、面に隙ができます。簡単ですね。是非試してみてください。これだけで、引き技を打つ前の崩し方ということではかなり幅が広がりますよね。
最後に、体捌きを使った崩し方を用いて、そこから引き技を打つという方法を見ていきましょう。
押してくる相手には力を抜いて体を捌こう
特に小学生の低学年の試合を見ていると・・・
とツッコミを入れたくなる試合なんかも多いですよね。T君は体が小さいので相撲には滅法弱いようで、過去には実力差は歴然という相手にも試合で負けていたような状況でした。しかし、そういう相手に有効な崩し方があります。
所謂、暖簾に腕押し作戦ですね。押してくる相手には力を入れてくる瞬間に体を捌けば良いのです。何も横綱相撲をする必要はありませんよね。この場合、後ろに下がるのではなく、左右に捌くのが良いでしょう。すると、下の写真のような状態になります。
押してくる相手を左右に捌きながら、引き技を打つ。ちょっと小学生低学年には難しいかもしれません。しかも、成長するにつれ、相撲をとるという子も少なくなってくるので、意外と使えない崩し方と言えるでしょう。
では、意外と使える崩し方についても見ていきましょう。
鍔迫り合いをしていると、
という場合って意外と多いですよね。そういう時に最適な崩し方がこちら。
- 少し下がる
- 相手が前に出てくる
- 出てくる瞬間を狙って鋭く押す
- 素早く打突する
鋭く押すのは、相手の左足の踵を床に付けるのが目的です。踵が床に着いた状態からは攻撃ができませんよね。しかも、体勢も完全に崩れています。そこをすかさず打つことができれば、確実に引き技が決められますよね。
是非お試しください。
まとめ
今日は引き技を打つ前の崩し方について考えてみました。剣道の試合や稽古、昇段審査などは体格・性別に関係なく行われることが多々あります。普通に考えると、体格が小さいというだけで剣道には不利のように感じますが、実はそういうことばかりではありません。
引き技の前の崩し方についても同様に、体が小さいから相手を崩すことは無理というわけではありません。相手の力の入れ具合、タイプ、精神状態などによって崩し方のパターンを使い分ければピンチをチャンスにすることだってできるでしょう。
引き技についてはこちらの記事も参考にしてください。
では、もう一度記事を振り返ってみましょう。
引き技を打つ前の崩し方としては、色々なパターンがあると思いますが、その中から私が良く使うものをリストアップしてみました。
- 面を攻めて小手を打つ
- 小手を攻めて面を打つ(担ぎ面)
- 鍔元を上から押さえて手元が上がったところを引き胴
- 鍔元を左に押して手元が返ってきたところを引き小手
- 鍔本を右に押して手元が返ってきたところを引き面
- 引いてもくっついてくる場合は瞬時に押して引き面
- 押してくる相手を左右に捌いて引き技
YouTubeで高校生や大学生の試合を見ていると、崩し方は千差万別。よくあれだけ体が動くな~と感心させられます。若い人の動きは本当に素晴らしいですね。
あなたも自分なりに工夫して得意な崩し方パターンを作ってみてはいかがでしょうか?
鍔迫り合いからの引き技をいくつか得意技として持っていると、稽古や試合でも有利な展開に運ぶことができるでしょう。
SPONSORED LINK