twitterを見ていると、こんなツイートがありました。
コツを実感できない。
今年はあと半年あるから、引き技を獲得したい。
mimiさんの悩みをまとめると次のようになります。
- 鍔迫り合いからのタイミングがわからない
- 間合いがわからない
- 手の内が効かない
そして、最終的に・・・
ということでした。
引き技って難しいですよね。特に大人になってから剣道を始めた人にとって、引き技は応じ技以上に難しい印象です。そして、結果的に打たないという選択をすることになるのかもしれません。でも、やっぱり引き技を打ってみたいですよね。というわけで、今日は
剣道の引き技ってどうやったらうまく打てるの?コツを教えて!
というテーマを取り上げてみたいと思います。試合中で鍔迫り合いの時間というのは意外と多いので、そこで技が出せるというのは自信に繋がりますよね。是非、試合で決められるくらいになってみましょう。
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引き技のコツは手の内にあり!
子供は特に教えなくても、見よう見真似で出来てしまうのが引き技。しっかりした有効打突として打てるようになるにはきちんとした指導が必要かもしれませんが、特に指導しなくても形にはなりますよね。
その点、大人になってから剣道を始めた人にとっては非常に難しい動作です。それは何故でしょうか。最も難しい点は、間合いが近いので殆ど振りかぶらずに小さく打たなければならないという点ではないでしょうか。
つまり、正しい手の内が身に着いていないと小さな打突は難しく、小さく打てないから間合いを取らなければならない。間合いを取ろうと無理に離れると逆に隙ができてしまい、打たれてしまうという図式が思い浮かびます。
引き技の解り易いスロー再生の動画がありましたので、まずはこちらを見てみましょう。
上の動画は足さばきについての解説の動画なので、引き面については私の理想とは少し違いますが、大人の方が参考にするには良い資料だと思います。
さて、本題に入りましょう。一度に全部を説明するのは難しいので、引き技を打つ時の動作を下の3つの動作に分解して考えてみたいと思います。
- 鍔迫り合い
- 打突
- 残心
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
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鍔迫り合いも中段の構えも基本的には同じ!
引き技を打つ時に重要なのが、鍔迫り合いの時にすぐに打てる構え、姿勢を作っておくということです。
これは鍔迫り合いに限らずお互いに中段に構えている時でも同じですね。一足一刀の間合いからすぐに打てる構えを作っておく。同様に鍔迫り合いでもすぐに打てる構えを作っておくことが重要です。
そして、打つタイミングとしては次の2つです。
- 相手に隙ができた時
- 自分から仕掛けて相手を崩す
- 相手を押す
- 竹刀の位置を相手と入れ替える
- 打突する以外の部位を狙う
まず、相手が勝手に崩れてくれた、または隙ができた時。ここは迷わず打ちましょう。しかし、通常は鍔迫り合いで崩れることはありませんよね。そういう場合は自分から仕掛けて崩さなければなりません。
では、相手を崩す方法について見ていきましょう。
鍔迫り合いから押す時は左足で!
先日購入した書籍の中に鍔迫り合いで相手を崩す方法について書かれていました。
高倉先生によると、鍔迫り合いで相手を押す時は左足で押すということです。そして、相手の左足の踵を床に着けるということができれば、相手は出遅れることになります。
この時の注意点としては、左足の力を相手に伝えなければならないので、脇を軽く締めておくということですね。そうすれば足の力を伝えることができ、うまくタイミングを見計らえば相手を崩すことができます。
練習方法として、左足ケンケンでの鍔迫り合いを推奨されていましたが、中年のおっさんがケンケンするのは危険行為なのでやめた方がいいですね。夜中に足がつって大変なことになりました。
では、次に鍔迫り合いから手の動きで自分の有利な体勢を作る方法について考えてみたいと思います。
竹刀の位置を相手と入れ替えてみよう!
お互いに正しい鍔迫り合いをしていると、その状態からはなかなか打てません。膠着(こうちゃく)状態というやつですね。試合で膠着状態が続くと「別れ」が掛かりますが、それ程打てない状態なのです。
上記の相手を押すこと以外で膠着状態を打破する方法として、竹刀の位置を相手と入れ替える方法があると思います。なかなか言葉で説明するのは難しいのですが、手首を返して裏交差状態になると言えば良いのでしょうか。
しかし、注意しなければならないのは、裏交差になった瞬間には打つべきだということですね。その状態は相手が崩れた状態になるわけなので、相手の体勢が戻る前に打たなければなりません。また、裏交差での鍔迫り合いは長時間になると反則になる可能性もありますので要注意です。
竹刀を裏側に回したら、面、または小手に隙ができますので打ちたい放題ですね。
また、相手の手元を下に押す、左に押すという方法も有効です。押すことで相手の手元が反対方向に戻ろうとする瞬間を狙います。下に押し、上に押し戻す瞬間を胴。左に押し、右に押し戻そうとする瞬間を面、または小手という具合ですね。
では、最後に打突する以外の部位を狙うという方法を見ていきましょう。
打突する以外の部位を狙う
打突する以外の部位を狙うというのは、簡単に言うとフェイントということです。
例えば、小手または胴を打つと見せかけて面を打つ。面を打つと見せかけて小手または胴を打つ。これは攻めの基本で、上を攻めて下を打つということと同じですね。
似た技で担ぎ面もありますが、担ぎ面は小手を打つと見せかけるのと同じ効果なので、上手く打てない場合は小手を打つ動作をイメージしてみると良いかも知れません。
では、実際の打突動作に関する部分を見ていきましょう。
打突は小さく鋭く手の内を効かせて打つ!
鍔迫り合いの状態からの打突は間合いが近過ぎて竹刀の打突部で相手の打突部位を捉えるのが難しいですね。ですから、コツとしては上半身を反らせ気味にして相手との間に瞬間的に空間を作るという動作が必要になります。
本来なら足さばきによって間合いを取り、そこから打突をするのが正しいのかもしれませんが、上の動画を見てもわかるように、上半身が離れ、その後に足を動かして後退しています。そして、後退する時には既に打突していなければなりません。
イメージができない場合は上の動画を何度か見直してください。納得できると思います。
しかし、空間ができると言っても大きく振りかぶって打てる程の距離はありません。では、どうするのか。鍔迫り合いの状態からそのまま剣先を落とすようにして打突します。ここでわざわざ振りかぶりの動作を入れると打突が遅くなるので要注意です。
この時に、手の内を効かせて小さく打つという技術が必要になります。
実際に打突するとき、引き面の場合は鍔迫り合いの状態からそのまま両腕を伸ばして最後に手首のスナップと手の内を効かせるイメージです。コツとしては、左手を少し引くのがポイントですね。
しかし、更に難しいのは引き小手ではないでしょうか。
引き小手の場合は竹刀を裏側に回さなければ打てません。ですから、鍔迫り合いの状態で竹刀を立て、相手の竹刀の裏側に回しやすい状態にします。そして、その状態から竹刀の剣先を落とすイメージですね。勿論、最後に手首のスナップと手の内を効かせて打ちます。
引き胴に関しては特に注意すべき点は思い浮かびません。あんまり打てないという人も見たことがありませんので、恐らくやってみたら打てるのではないでしょうか。
では、引き技を打って竹刀の打突部で打突部位を捉えたとして、一本になるかと言われると、ちょっと難しいかもしれません。何故なら、残心が無いからですね。
面打ちの残心は大きく!
有効打突とは何かと考えた時、残心を示すということが重要です。しかし、引き技の残心というのは本来の残心という意味合いとは少し違うようなイメージを持っています。特に引き面。
引き技は前に出て打つ場合と違い、どうしても打突が弱くなってしまいます。ですから、打った後に大きい動作で残心を示すことが重要ではないかと思います。
引き面の場合、面を打った後、素早く竹刀を立てて上段の状態になることが好ましいでしょう。この時、イメージとしては頭の中心から竹刀が生えているイメージ。そして、その竹刀を後方斜め上に引っ張られているような感じで後退すると良いでしょう。
引き技と言ったらこの人ですね。梅ケ谷選手。何度見ても凄いです。じっくりご覧ください。
引き面を打った後の残心、こんな感じで行きましょう。打った後は素早く後退。イメージ的には打った直後は大きく後退、その後は小さく速くできると良いのではないでしょうか。
まとめ
今日は引き技のコツということを取り上げてみました。ちょっと文章ばかりで解り難くなってしまったかもしれませんが、少しはmimiさんの参考になったでしょうか。
では、記事をもう一度振り返ってみましょう。
まず、引き技を打つタイミングとしては、次の3点。
- 相手に隙ができた時
- 自分から仕掛けて相手を崩す
- 相手を押す
- 竹刀の位置を相手と入れ替える
- 打突する以外の部位を狙う
打つ間合いは鍔迫り合いから上半身を反らして相手との間に空間を作るイメージです。タイミングと間合いがわかれば、後は打つだけ。
引き技を打つ時の一番のコツは手首のスナップと手の内を効かせるということですね。そして、打った後はしっかり残心。
どうでしょうか。なかなか難しいかもしれませんが、少しずつ練習してみてください。
ちなみに、私は若い頃から比較的引き面が得意で、中学時代の試合で取った有効打突は引き面ばかりだったような気がします。しかし、年齢と共にあまり打たなくなってきました。
と言っても、実は六段審査でも打ちましたが。先生には
って言われましたが・・・
実際、打っても合格できたのであんまり深く考えなくても良いかもしれません。
引き技の基本ができるようになったら、相手を崩してから打てるようになりたいですね。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
引き技は、打てるというだけでは実践で使えないかもしれません。相手を崩してから打たなければ、避けられてしまいますし、逆に隙を作ってしまうことにもなります。ですから、是非、崩し方も覚えましょう。
技のバリエーションは多い方がいいですから、mimiさんも引き技が有効打突になるように練習しましょうね。
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コメント
上の引き技の動画で技を出しているものです。
ちょっとした情報があった方が、良いかと思いご連絡しました。
引き技を打っている私は29歳の男(高校教員)です。
今回のテーマが「大人」ということでしたので、
大人の方でも十分に打てるかと思います。
この動画は、指導している中学生・高校生に
どういう風にすればいいのか考えた結果の術でした。
剣道を長くやっているものには、感覚的に下がりながら打つは
分かるものですが、そうでない生徒が多い私の学校ではその場で
見せてもいまいち伝わらないと思って、動画として載せるという
方法になりました。
未熟な私の動画を取り上げてくださってものすごく嬉しいです。
誠にありがとうございます。
また、日ごろからとても参考になる情報をありがとうございます。
今後も継続して参考にさせていただく予定ですので、よろしく
お願いいたします。
加藤様
コメントありがとうございます。
動画の件、勝手に掲載してしまい申し訳無いです。大変解り易い動画ですね。
他にも引き技の解説をしている動画はいくつかありましたが、解り易い動画というのはあまりありませんでした。
しかし、いつも思うのですが、感覚的にできることを説明するというのは本当に難しいです。
引き技とは全然違うんですけど、、、
試合でよく相手に小手を取られてしまいます。。どうすればいいですか??
あと蹲踞からすぐ立ち上がって面が打てないです。
アドバイス お願いしますm(。≧Д≦。)m
れねさん、コメントありがとうございます。
小手を取られるというのは恐らく面を打ちに行く時ではないでしょうか。
れねさんの剣道を見ていないのでアドバイスも難しいのですが、面打ちが二拍子になっていると小手が打たれやすいと思います。剣先をすぐに上げないようにして一拍子で打つと良いと思います。こちらの動画を参考にしてみてください。
また、蹲踞からの打突については、現在は試合場の開始線が離れているので開始で打てないようになっています。ただ、より早く立ち上がるには、蹲踞の時の左右の足が構えの足に近い状態である必要があるでしょう。
構えの状態からそのまま蹲踞ができると理想的ですね。
丁寧な返信 ありがとうございます!
ご指摘を参考に明日から練習に励みたいと思います!!
また疑問点があると質問させていただくと思います!
れねさん
実際に見ていないので見当違いのアドバイスになってしまっていたら申し訳ないです。
周りの先生に聞いてみるのが一番だと思いますが、聞くのも難しいかもしれませんね。
また何なりとどうぞ。
いつも参考にさせて頂いております。
よろしければ質問させて下さい。
「引き技を打った後の下がりが遅い、だから一本になりにくい」
との指摘をよくうけます。
どの様な点を意識して下がれば早くさがれるのでしょうか?
先生方に教わってもいまいちピンと来ず、困っております。。。
KRRさん、コメントありがとうございます。
引き技の時の後退速度を速くするというのは非常に難しいように思います。私もなかなか速く後退できません。特に大人から始めた方は難しいのではないでしょうか。
考えてみましたところ、通常の送り足は小さく速くと言われますが、引き技に関しては大きく速くの方が良いのかもしれません。特に踏み込みの次の最初の1歩目を大きく引くのが良いのではないかと思います。
バランスを取るのが難しいかもしれませんが、思い切って歩幅を広げて下がってみては如何でしょうか。
お返事ありがとうございます。
一歩目を大きく、ですね!
自分は高校の時から今まで引き技で一本をとれた事が数える程しかありませんので(泣)、
一本になる技目指してまずはそこを意識して稽古で試してみます!
続きを書こうと思っていたのですが、先に返信頂きありがとうございます。
上に掲載しています梅ケ谷選手の引き面をスロー再生で改めて何度か見てみました。確かに後退が速く感じるのですが、実際に速いのかどうかはわかりません。(笑)
速く見えるのは、もしかすると完全に相手が置いてけぼりになっているからのようにも思えました。やはり、後退を速くというのも重要かもしれませんが、相手を崩すというところが最も重要なのではないかと考えます。
崩し方の研究もされてみては如何でしょうか。
お返事を頂けたのが嬉しくて、つい先に返信してしまいました笑
確かに練習試合で審判をしている時も、相手の崩れた所・気の抜けた所に打ち込んでいない引き技は旗を上げにくいな~と感じますね。。。
稽古の際も、崩すところを十分確認してから打ってみます!
丁寧に解説いただきありがとうございました!
いつも参考にさしていただきありがとうございます。私は鍔迫り合いからの引き面をよく取られます。対応策をご指導ください。目線・肘・肩・足運びと注意点もお願いします。
西上様
コメントありがとうございます。
西上さんが、どのような状況で引き面を打たれるのかという部分がわからないので何とも言えませんが・・・
私も若い人には良く打たれます。私の場合は、打たれる時に
「この間合い、この状況からは打ってこないだろう」
と油断している時が多いように思います。中段の構えと鍔迫り合いは間合いが近いだけで他は同じだと良く言われますが、鍔迫り合いの時にも常に自分が攻め勝っていれば打たれることは無いのではないかと考えます。
一般的なことになりますが、鍔迫り合いの時には脇を絞めて、足・腰の力を相手に伝えるようにすべきかと思います。だからと言って、堅くなり過ぎては居着きに繋がるので、注意が必要です。
また、鍔迫り合いの時も中段の構えと同様に両足の踵は常に浮いている状態が良いと思います。例えば、相手に押されて踵が床に着いた状態になれば、そこから打つことができませんし、相手にとっては打つべき機会になるでしょう。
丁寧にありがとうございます。なるほど、若い人と鍔迫り合いに攻めの姿勢が足りなかったと思います。守りでは年齢差で、反応が余計に遅くなってしまいますね。明日から気をつけてやってみます。