色んな人と稽古をしていると、特に初心者の方や大人から剣道を始めた方というのは蹲踞から構えるまでの所作を見るだけである程度実力を把握することができるように思います。しかし、なかなかそういった所作に気を配ることは難しいですよね。
というわけで、今日は
剣道における美しい蹲踞の姿勢を身に着けよう!
というテーマを取り上げてみたいと思います。もし、あなたが今まで蹲踞の意味について考えたことが無いのなら、これを機に意味を考えてワンランク上の所作を身に着けてみましょう。
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蹲踞の意味を考えよう!
蹲踞は剣道だけではなく、相撲の立ち会いでも行われています。更に、多少の違いはあれど弓道や神社の巫女さんの儀式などにも見られるようです。
あなたのように、ずっと剣道をしていると、蹲踞というのは常日頃から行う所作の一つに過ぎません。ですから、蹲踞についての意味など考えないのが普通ではないかと思います。とは言え、蹲踞は礼法の一種ということは何となく理解しているのではないでしょうか。
ここでは、もう少し具体的に考えてみましょう。蹲踞の意味を具体的に言うと、このようになります。
- 相手にかしこまった形を示す敬礼
- 特別な空間に入る前に行う儀式
では、それぞれについて具体的に見て行きましょう。
相手にかしこまった形を示す敬礼
体を最も低くすることで、相手にかしこまった形を示します。Wikipediaによると『貴人が通行する際にしゃがんだ状態で礼をするさま』と書かれていました。有名な神社では入る前に蹲踞をする必要があるそうです。
また、公家の礼法の中にも蹲踞がありました。この場合の蹲踞は剣道の蹲踞とは若干形が異なり、踵を床に付けるのですが、意味としては敬礼する際の坐法。
調べてみると、他にも巫女さんも蹲踞の姿勢を取るという儀式があります。神という特別な存在に対する敬礼の意味があるようです。
つまり、蹲踞の姿勢は相手に対する敬礼の意味ということ。短距離走のクラウチングスタートのような開始前の姿勢を作るだけではないということです。
特別な空間に入る前に行う儀式
蹲踞について調べていると、蹲踞(つくばい)という言葉が出てきます。蹲踞(つくばい)というのは、茶道で茶室に入る前に手を清める為に洗う姿勢のことを言うそうです。つまり、蹲踞(つくばい)は茶室と言う特別な空間に入る前の儀式。
茶道について詳しいことはわからないのですが、茶室というのは特別な空間であるという認識はありました。その知識はこちらのコミックからの知識ですが。(笑)
茶道において、茶室というのは敵同士であってもいがみ合うことは許されないそうです。勿論、武器を持ち込むこともできません。そんな特別な空間が茶室。ある意味結界とも考えられます。
蹲踞(そんきょ)と蹲踞(つくばい)は全く同じ漢字を使います。ですから、剣道における蹲踞(そんきょ)も特別な空間(試合場)に入る前の儀式と考えても良いのではないでしょうか。
では、具体的に剣道における蹲踞の姿勢について見て行きましょう。
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美しい蹲踞の姿勢を身に着けよう!
まず、剣道における蹲踞の方法を考えてみましょう。蹲踞についていくつかの文献を参考にしましたが、足の部分について明確に書かれているものを見付けることができませんでした。また、色々な方に話を聞いてみると、
- 相撲のように左右の踵を付ける
- 蹲踞をする時に左足を右足に近付ける
- 立ち上がった時に右足を一歩踏み出す
- 以前は相手に正対と教わったが、最近は半身と言われる
- 昔は女子は左膝を床に付けていた(後述します)
などの意見がありました。所作についての文献を見付けることができなかったので、どれも間違いとは言えませんし、もしかすると統一されていない可能性もあります。この辺りについては引き続き調査していきたいと思います。
私が行っている蹲踞の方法は、全日本剣道連盟主催の中央伝達講習会で教わった方法です。講師によっても考えが違うかもしれませんので、これが必ずしも正解とは言えませんので参考程度にして頂けると幸いです。
その方法はこちら。
- 中段の構えををとる
- 左足の中指と人差し指の付け根を中心に左足を回転させ、左足の踵を右足に近付ける
- ゆっくり膝を曲げながら両足の踵を持ち上げる
- 踵の上にお尻がつくようにしゃがむ
この時に背筋を伸ばすことが重要です。最初はバランスを保つことも難しいと思いますが、繰り返し練習するのが良いでしょう。
蹲踞の姿勢から中段に構える時は、そのままの状態でスッと立ち上がり、左足を先程と逆方向に回転させます。左足の爪先は相手の方を向き、中段の構えになるでしょう。足を前後に動かす必要はありません。つまり、そのまま立ち上がっただけですぐに攻撃ができるのです。
ポイントとしては、頭の上から煙が出ているようなイメージを持つと良いのではないでしょうか。無風の状態で煙がス~~ッと上に上がっていくようなイメージです。
そして、焦らずにゆっくり行うのが良いでしょう。時間を掛け過ぎるのも良くありませんが、高段者の先生方の立ち会い動画などを見ると違いが良くわかると思います。
但し、蹲踞の時にもう一仕事しなければなりませんよね。抜刀です。
蹲踞の時の抜刀の注意点
剣道において稽古や試合の時に蹲踞をする場合、
- 試合場に入る
- 竹刀を抜く
という動作も行わなければなりません。試合場に入る時の手順としては次のようになります。
- 帯刀の状態で、右足から歩み足で大きく3歩進む
- 3歩目で竹刀を抜きながら、中段の構えを通るように蹲踞する
この時の注意点としては、竹刀を抜くときには刀を扱うような気持ちを持つことでしょう。先生方は竹刀を抜いたら袈裟斬りに竹刀を振り下ろして中段に構えると言われます。
袈裟斬りというのは、『一方の肩から他方の腋へかけて刀で斬り下げること』とあります。つまり、相手の左肩から右脇に掛けて斬るような気持ちでということですね。ちなみに、袈裟というのはこれのことです。
そこまで大袈裟にしなくても良いとは思いますが、竹刀を抜くときは剣先が上から下に向かうようにするのが良いでしょう。決して、竹刀を横からパッと持ってきたり、下から持ってきたりということの無いようにしましょう。
通常、刀は鞘に収まっているということを考慮すると、すぐに答えは見つかるのではないでしょうか。
所作は急がず丁寧に!
また立ち会いの時の動作で礼から蹲踞までの一連の動作は焦らず、急がず丁寧に行うべきでしょう。前述しましたが、ただの準備状態ではなく相手を敬うということを表現するような気持ちで行うと良いと思います。
特に、日本剣道形にあるように、仕太刀は師の位である打太刀の動作に合わせるのが良いとされています。ですから、上下関係の無い場合については特に気にする必要はありませんが、相手の方が先輩であったり先生である場合にはほんの少し動作を遅らせるのが良いと思います。
ところで、前述しました女子の蹲踞については、色々な理由があるようです。
蹲踞で膝を付く姿勢は間違い?
Wikipediaで「蹲踞」を調べてみると、『立膝をついた座法を言う』と書かれていました。ですから、左膝を付くという方法も間違いではないと思います。
私が剣道を始めた頃、中学生女子の中には左膝を床に付けた蹲踞の姿勢を取っている選手もいたと記憶しています。また、その頃『男子と女子は蹲踞の仕方が違う』と教わった記憶もあります。
かなり前の事なので記憶は曖昧ですが、女性が股を開いてしゃがむという姿勢が良く無いということだったと記憶しています。今の世の中、男女平等が当たり前の時代なので、そのようなことを言うとナンセンスと言われるのでしょう。そういったことは近年では全く聞かなくなりました。
勿論、蹲踞による男女の差も無くなりましたよね。
但し、膝を痛めている人の場合は片膝を付く蹲踞の姿勢をされます。私も加齢と共に色んな関節が痛くなってきました。ですから、あと何年かすると片膝を床に付けた蹲踞の姿勢をとらなければならないかもしれません。
ところで、美しい蹲踞をするには意外と脚力が必要ですよね。どうやら、美容業界でも蹲踞はエクササイズとして最適だという認識があるようです。
美しい蹲踞には脚力が必要!美容と健康に最適!
あなたも気が付いていると思いますが、蹲踞の姿勢やその前後の所作には脚力を必要とする動作が含まれています。特に、蹲踞の姿勢でグラグラしてしまうのは、バランス感覚と脚力の弱さが原因でしょう。
ですから、逆を返せば蹲踞を何度も繰り返すことで良いトレーニングになるとも言えます。蹲踞の効果としては、主に次の3つが挙げられます。
- 太もも&ヒップの引締め
- お腹が引締め
- 骨盤矯正効果
内ももの引き締めに特に効果的。内ももを鍛えることでO脚の改善にも効果あり。
インナーマッスルを鍛えることで下がってきた内臓を支えることもできる。
骨盤底筋が鍛えられることで、骨盤の歪みも解消される。
ここだけの話ですが、尿漏れなどで悩んでいる方も、骨盤底筋を鍛えることで改善する可能性もあるそうです。ヨガのポーズにもあるようです。蹲踞効果恐るべし!!
まとめ
今日は、美しい蹲踞の姿勢ということについて考えてみました。重要なのは蹲踞は形だけではなく、心を込めることも必要だということです。
剣道における蹲踞の意味はこちらでした。
- 相手にかしこまった形を示す敬礼
- 特別な空間に入る前に行う儀式
ですから、焦らず丁寧に、重みのある蹲踞ができると見ている人や相手の人にも良い印象を与えることができるでしょう。
また、美しい蹲踞の姿勢はバランス感覚や脚力も関係します。日々の稽古で足りないと感じる時には、トレーニングも兼ねて一人で蹲踞の練習をするのも良いのではないでしょうか。
ちなみに、韓国のコムドーには蹲踞が無いそうです。礼に始まり礼に終わるという部分が大きく欠如してしまっているのではないかと感じます。ですから、必要以上に形に拘らなくても良いとは思いますが、きちんと意味を知り、ワンランク上の所作を行えるようにしましょう。
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