というわけで、剣道の昇級審査が近付いてくると木刀による基本技稽古法の稽古をしなければなりません。
木刀による基本技稽古法は平成21年10月から1級から3級審査の必須項目になりました。日本剣道形を行う前に木刀に慣れさせるというのが趣旨ではないかと思います。
そして、木刀による基本技稽古法は日本剣道形とは違って現代の竹刀剣道で使える技になっているので、普段の稽古が正しくできていればそれ程難しいものではなく、比較的覚えやすいと思います。
とは言え、木刀に触れる機会の少ない小学生にとっては難しいというイメージが強いようですね。というわけで、今日は
剣道の木刀による基本技稽古法のポイントを知ろう!
というテーマを取り上げてみたいと思います。これでもう、あなたにも基本技稽古法がわからないとは言わせませんよ!!
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基本技稽古法の動画
木刀による基本技稽古法は基本1から基本9までの9種類ですが、昇級審査では受ける級によって本数が変わってきます。全日本剣道連盟の審査規定では下記のように決められています。
- 3級 - 基本1~基本4
- 2級 - 基本1~基本6
- 1級 - 基本1~基本9
級が上がるにつれ、技は増え、難易度も上がります。基本4までは掛かり手だけが打つ技ですが、基本5からは応じ技になってきますね。基本1から基本9は下の通りです。
解り易い動画がありましたので、ご覧ください。一か所(基本3の元立ち)だけ間違いに気が付きましたが、他は凄く上手ですよね。実はこの動画、ろくに稽古もせずにぶっつけ本番で撮影されたというから驚きです。
動画の製作は「剣道五段への道」の管理人さんです。今回、動画掲載にあたり動画と画像の掲載許可を頂いております。
全体的な流れについては動画を見て頂けると良くわかると思いますので、細かな注意点を見ていきましょう。
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間合い
まず、立ち合い時の間合いについてですが、これが非常に難しい。木刀による基本技稽古法で最も難しいのが間合いではないかと思うくらいです。
最も注意しなければならないのが、礼式の時の間合いと打突前の間合いが違うということです。更に言うと、竹刀で構えた時と木刀で構えた時の間合いも違いますので注意しましょう。
それぞれの間合いは以下の通りです。
- 礼式の時の間合い
- 打突前の間合い
一足一刀(一歩で打てる)の間合い
木刀の横手(剣先の三角の部分)が交差する位置
更に紛らわしいのが、打突後に元に戻った時は礼式の間合いでなければならないという点でしょう。つまり、図で表すとこういうことです。
こちらが礼式の間合いです。
木刀の横手が交差する位置ですね。
そして、こちらが打突前の間合い。一足一刀の間合いです。
竹刀の間合いとも違うので、非常に難しいと思いますが、上の動画は間合いが凄く良いですね。本当に稽古していないとは思えません。
また、一足一刀の間合いというのは人それぞれ違うので、自分の間合いをしっかりと覚えることが重要です。
それでは、引き続き基本1から順に注意点を見ていきましょう。
基本1、基本2の注意点
動画の後半に解説があるように、物打ちで打突部位を捉えることが重要です。前述した「間合い」が遠ければ届かないので注意しましょう。
突き
突きは突いてから引くという部分が重要です。腕を伸ばして突きっぱなしにせずにすぐに引きましょう。
小手面
小手面は元立ちが難しいと思います。掛かり手に小手を打たせたら、素早く一歩後退し、木刀を右側に返して面を打たせます。
そして、元に戻る時、掛かり手は残心も含めて三歩、元立ちは掛かり手の三歩目と同時に一歩前に出なければなりません。掛かり手と心を一つにして動けると綺麗に見えますね。
基本3は一拍子で打つ!
基本3は表からの払い面です。小学生に教えていると、どうしても払いと面打ちが別々の動作になってしまいがちですので注意しましょう。
ポイントとしては、1歩足を踏み出すの同時に払う動作を行うというところですね。払う動作と振りかぶる動作が一連の流れにならなければなりません。小学生にありがちなのが、振り下ろしと同時に右足を前に出すということです。
基本1の面打ちの時には振りかぶりと同時に右足を出しているのですが、基本3になると足が遅れるというパターンが多いように思います。二拍子ではなく、一拍子で打てるようにしましょう。
基本4の引き胴は残心が難しい?
基本4は引き胴です。面体当たり引き胴ですね。この時のポイントとしては以下の2点。
- 面の後に元立ちは一歩前進
- 胴を打った後二歩後退
これだけでは良くわからないかもしれませんので、もう少し詳しく説明したいと思います。
面の後に元立ちも一歩前進
面を打たせた(受けた)後に双方やや前進して鍔迫り合い状態にならなければなりません。この時前に出ない子が非常に多いのです。何度教えても忘れてしまうようです。
そして、一歩前進しているので、最後は一歩後退して元に戻る必要があります。
掛かり手は二歩後退?三歩後退?
掛かり手は胴を打った後に一歩後退して残心を示し、更に一歩後退して元に戻ります。しかし、引き技なので、胴を打つ時きも一歩後退しますよね。ですから、全部で三歩後退することになります。
間違いやすいのが、胴を打った後の残心ですね。残心の時には元立ちは打たせた状態で待っているとうまく合わせられると思います。しかし、全部で三歩後退することになるので、小さく後退すると良いでしょう。
基本5面抜き胴
基本5は面抜き胴ですが、間違いやすいのは胴を打つときの体の向きです。面を抜く時に右斜め前に前進しますが、この時の体(足)は前を向いたままの状態。そして、目付は外さないというところもポイントです。つまり、体は前を向いているのですが、目は左斜め前を向くことになりますね。
胴を打った後は「双方とも正対しながら一歩後退」となっていますが、この時は斜め方向に後退しなければなりません。
掛かり手が残心を示した後に元の位置に戻りますが、この時の歩数は決まっていません。一歩で戻る場合が多いと思いますが、二歩で戻っても間違いではないので、自分のやり易い方法を取ればよいでしょう。
基本6小手すり上げ面
基本6の小手すり上げ面のポイントはすり上げる時の足の動きだと思います。「掛り手」は左足から1歩後退しながら自分の木刀の裏鎬で相手の裏鎬をすり上げ、すかさず右足から1歩踏み出し正面を打つ。
基本7出ばな小手
出ばな小手は元立ちが出ようとする出ばなを小さく鋭く小手を打ちます。他の技は全て大きく打つことが基本となりますが、小さく打つという点が異なるので注意しましょう。
また、元立ちはやや前に右足を出しますが、一歩出るわけではないので左足を引き付ける必要はありません。元に戻る時は右足だけを構えの位置に戻します。
基本8面返し胴
面返し胴を打つ時の最も重要なポイントは相手の木刀を迎えるように応じるという点ではないでしょうか。そして、やや右斜め前に出ながらという部分も難しいですね。
つまり、その場で相手の木刀を受けていては駄目ということですね。竹刀での稽古で面返し胴を打つ時も同様で、相手の竹刀を迎えるようにして返すと余裕を持ってうまく返せます。
面を打った後は基本5の面抜き胴と同じ動作になります。
基本9胴打ち落とし面
竹刀剣道で胴打ち落とし面を使う場面が来ることは非常に稀ではないかと思いますが、鍔迫り合いから相手が引き胴を打つ場合には有効な技かもしれません。
この技の難しい点は、やや左斜め後ろにさばくという点です。やや左斜め前に体をさばきながら、元立ちの木刀を打ち落とします。
また、掛かり手が面を打った後は双方とも正対しながら一歩後退します。この時に掛かり手は残心を示します。最後に右に移動して元の位置に戻ります。
これで基本1から基本9まで全てが終わりました。でも、順番が覚えられない・・・っていう人も多いはず。そんな時の覚え方を紹介しましょう。
基本技稽古法の覚え方
木刀による基本技稽古法の順番ってなかなか覚えられませんよね。そんなあなたは、こうやって覚えてみましょう。
「一二と、払い引き抜き、すり上げて、出ばな返して、打ち落とすなり」
剣道講習会で先生に教えて頂いた覚え方です。でも、はっきり言って覚えられません。(笑)ですから、参考程度にどうぞという感じですね。それに、順番自体にそれ程意味があるとは思えませんし、私は覚えなくても良いと思っています。
と言うのも、実際今まで順番を覚えていなくても特に困ったと感じることが無いからです。指導の時は解説書を見ながらやっているからというのもありますが、昇級審査の会場でも立会人が声を掛けますし。
色んな動画を見ても、やはり「基本1、~~」、「基本2、~~」という風に立会人が声を掛けているので、言われた通りに演じれば良いのではないかと。
って、偉い先生に怒られそうですね。
まとめ
剣道の木刀による基本技稽古法は級審査の時に必要だから仕方なく稽古をしているという子供達も多いと思います。でも、最初に書いた通り実際の竹刀剣道にも応用のできる技ばかりです。
実際には後退しながらすり上げたり打ち落としたりということは難しいと思いますが、自分なりに研究してやってみると面白いと思います。ちなみに、私は小手すり上げ面が得意ですが、前に出ながらすり上げて行います。
また、団体によっては初心者は竹刀ではなく木刀での稽古から始めるというところもあるようです。木刀の方が正しい握りができるからですね。私としては、初心者に木刀を握らせるというのはとっても理想的だと思いますが、危険も伴うので悩みどころです。
ですから、握りの矯正には普段から木刀での素振りを行うことが良いのではないかと思います。そして、基本稽古の前に木刀による基本技稽古法を行うというのが理想ですね。なかなかその時間が取れないというのが実情です。
中学・高校の部活動で朝の練習で時間が無い時なんかに行うと良いかもしれませんね。今度中学生に提案してみようと思います。
何にせよ、木刀による基本技稽古法は級審査の為だけのものではないということです。正しい剣道を学ぶにはとっても良い稽古法だと思います。
ちなみに、小学生は竹刀よりも木刀の方がカッコイイと思ってるところがありますよね。
他にも昇級審査・昇段審査関連の記事を書いていますので、是非ご覧ください。
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コメント
この夏から愛媛県今治の吉海剣道教室に出させて頂いてます。かれこれ20年ぶりのヒョッ子です。週一の稽古ですが、こちらのページで毎週勉強します。先づは基本型を子供たちと覚えていきます、、これからよろしくお願いします。
松村さん、コメントありがとうございます。
20年前には木刀による基本技稽古法はありませんでしたね。日本剣道形よりは実践的で取り組みやすいと思います。面を着けての稽古にも発展できますので、是非色々やってみてください。
追伸
同姓同名の後輩が居たような、居なかったような・・・
40過ぎて3級どまりの私としては、ただ愕然とするしかありません。
……昇級できなかったので、形、教えてもらえなかった。
初段はおろか1級さえもが遠く見えます。
道場に通わなくても練習できるものでしょうか。
猪崎様
コメントありがとうございます。
別のコメントも拝見しました。
木刀による基本技稽古法は猪崎さんが3級を受けていた時代にはありませんでした。
それほど難しいものではありませんが、最初は道場で指導してもらわないとわからないと思います。
そして、昇級・昇段に関しては昔とは事情も変わっています。
どうやら今は1級まではほとんど落ちないようです。
うちの地域は普通に不合格を付けますが。