それは、とある土曜日の午前のことでした。中学校の部活動にちょっとした用事があったので、ついでに稽古の見学をすることに。試合を終えたR君がアドバイスを求めてきました。
ますます混乱させてしまったようでした。(笑)
R君が試合をしていた相手の子は明らかにR君よりは格下の相手。打ち、スピード、その他諸々。実力差があっても有効打突を奪えないってことは本当によくありますよね。
というわけで、今日は
剣道のフェイント技とその対策方法
について取り上げてみたいと思います。剣道において、フェイントというのは卑怯な技、武士道に反すると言われる先生も居られますよね。ですから、私も推奨してはいませんが・・・
色々な書籍を読んでいると、フェイント技と攻めは密接に関係しているのではないかと感じます。
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剣道におけるフェイント技の種類
剣道の攻めの極意は虚実の攻めと言われます。これは、実を攻めて虚を打つという意味です。
こちらは第63回全日本剣道選手権大会で西村選手が打った小手です。
ちょっと解かり辛いですかね。フェイントという感じではないかもしれませんが、近いものがあるかと思います。面(実)を攻めて、手元を浮かせ、隙のできた(虚)小手を打っていますね。
もう、お分かりだと思いますが、もう少し解かり易く説明しましょう。
という感じですね。剣道で最も基本とされる中段の構えを取っている場合はどこにも隙がありません。しかし、何らかの動作を起こすことで隙ができます。隙の部分を虚と表現しているということですね。
面を避けようと、手元を上げれば「小手」「胴」に隙ができますし、小手を避けようと剣先を下げれば「面」「突き」に隙ができます。
また、「上を攻めて下を打つ、下を攻めて上を打つ」と表現される先生もおられます。これも虚実の攻めとほぼ同じような意味ですね。
問題は、具体的にはどのようにすれば相手に隙ができるのかという部分です。
そこで思い付くのが「フェイント」ということになります。フェイントという言葉、最近は良く耳にしますが、どういう意味でしょう?英語のfeintを辞書で調べてみると、こう書かれていました。
- 見せかけ
- 装い
- 振り
- 牽制
- 陽動作戦
つまり、見せかけの技なのです。予想通りの意味でした。では、剣道におけるフェイント技にはどのような技があるでしょう?一例を挙げてみましょう。
- 面→小手
- 面→小手→面
- 担ぎ面
- 担ぎ小手
- 一旦剣先を下げてから面
- 面→胴(左右)
他にもあるかもしれませんが、思い付いたのはこの程度です。実は私も若い頃には引き技としての担ぎ面を試合で多用していた時期もありました。フェイント技は鍔迫り合いからも有効な技ということです。
しかし、これらの技は諸刃の剣。無闇矢鱈に使用しても効果がないどころか、逆に自ら隙を作り、出端を打たれる危険性も非常に高いのです。そして、これらのフェイント技は相手の実力が上がれば上がるほど、通用しなくなります。
剣道では「打って勝つな、勝って打て」という言葉がある通り、完全に攻め勝っていないと有効にはならない技になります。例えば、攻め勝っていない状態で担ぎ面を打とうとした瞬間に出端面を打たれたり、出小手を打たれたりということもあります。
だからと言って、フェイントは使ってはいけない技だとは思いません。ただ、高段の先生方に出す技としては、無意味な技。それなら素直に真っ直ぐ打ちに行って、逆に打たれた方が気持ちが良いのではないでしょうか。
ただ、前述した通り、個人的にはフェイント技は攻めを学ぶ時の通り道であると考えます。
フェイントも攻めの一種だと思いますが、攻めというのはもっと幅広いものではないでしょうか。
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フェイントから攻めを学ぶ
多くの書籍に、「フェイント技を小さくしていくことで攻めに繋がる」と書かれています。
例えば、
- 面を打つと見せかけて小手を打つ
- 小手を打つと見せかけて(剣先を下げて)面を打つ
という二つの場合を考えてみましょう。フェイント技として考えると、面を打つ動作、小手を打つ動作を見せてから実際の打突を行なう必要があります。
段階的に、この見せかけの動作を少しずつ小さくしていくとどうなるでしょうか。剣先を殆ど動かすことなく、足と腰で見せかけの動作を行なうことになりますよね。
実際にあなたも経験しているのではないでしょうか?
相手が剣先を動かさずに前に出てきただけで、打突部位を竹刀で守ったり、のけ反ったりということを。これは精神的な部分で相手の方が優位に立っている場合に起こり得ることです。つまり、既に勝っている状態、正に「勝って打つ」ですね。
最終的には足腰の初動動作すら不要になるのかもしれませんが、私もまだまだその辺りは未知の領域です。八段の先生方と稽古すると、何もされていないのに勝手に打ちに出てしまうというのはそういうことなのでしょう。
つまり、フェイント技の初動動作の無駄な部分をどんどん削ぎ落としていくことで、逆に攻めの幅はどんどん広がっていくというイメージです。
ですから、小中学生の子供達にフェイント技を教える、教えないということに関しては賛否両論あるかもしれませんが、その先にある部分まで指導することを前提にすれば教えても問題ないのではないかと考えます。
ここまで来れば、フェイント技に対する対策というものもわかりますよね。
最強のフェイント対策は何?
フェイント技に対する最強の対策は、先を取って攻め勝つことです。これに尽きますね。
自分から仕掛けていき、攻め勝っていればフェイント技で負けることはありません。なぜなら、前述した通りフェイント技を打つ瞬間というのは大きな隙ができるからですね。
ですから、あなたが攻め勝っていれば、フェイント技を打つ瞬間に出端技で仕留めることができるでしょう。出端技については、こちらの記事も参考にしてください。
まとめ
今日は剣道のフェイント技について考えてみました。もう一度記事を振り返ってみましょう。
剣道のフェイント技には色々なものがありますが、一般的な技としてはこちら。
- 面→小手
- 面→小手→面
- 担ぎ面
- 担ぎ小手
- 一旦剣先を下げてから面
- 面→胴(左右)
しかし、フェイント技は攻め勝っていないと決まらない技なので、その点に気を付けながら使ってみるのも良いでしょう。そして、最終的には気迫だと思います。気迫に押されて何らかの隙を作ってしまうことってありますよね。もしかして、念力とか超能力とか、そういった類のものなのかもしれません。
そこまで行くとオカルトの領域になりますが、実際に打たれる時って何かを感じて動いたところですよね?ですから、逆にあなたが相手に対して何かを感じさせれば良いのです。
しかし、それが難しいから稽古をして少しずつ掴んでいくしか方法がないのです。剣道って本当に奥が深くて難しいですね。相手に打突の意思を悟らせないのも攻め、打突の意思を悟らせるのも攻め。一体どうすれば良いのでしょうか?(笑)
道はこれからもずっと続くことでしょう。
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