先日地域の大会があったのですが、A君が試合に勝てないと悩んでいるようでした。相談されたのはA君のお父さん。
何が悪いのでしょうか。
それは盲点でした。
頑張らないと直らないと思いますよ。
実は、八段の先生方でも基本稽古の面打ちの時などには継ぎ足をされる方が多いです。剣道教室などのDVDでも見たことがあります。しかし、地稽古や試合、審査という場面でははっきりとわかりません。
では、小学生低学年の試合ではどうでしょうか。継ぎ足をして大きく打っている選手が多い印象ですよね。しかし、高学年になるにつれ、そういう場面がなくなっていきます。それは何故でしょうか・・・
とうわけで、今日は
剣道で継ぎ足を直すべき理由と対策方法!
というテーマを取り上げてみましょう。継ぎ足は悪なのか否か。そして、A君の継ぎ足を直すことはできるのでしょうか・・・
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剣道で継ぎ足をしない方が良いワケ
実は、剣道の足さばきの中には継ぎ足という足さばきがあります。そして、継ぎ足自体は悪者ではありません。要するに適材適所というやつですね。ですから、試合や審査、稽古の中で継ぎ足をした方が良い場面もあります。
ただし、A君の場合は常に継ぎ足なのです。つまり、継ぎ足をしなければ打てないという癖がついてしまっていました。
継ぎ足の正しい使い方としては、
という時に、左足を引き付けて相手との距離を縮めるというもの。相手との距離というのは左足の位置によって決まるので、見た目は間合いを詰めていないように見せ掛けて距離を詰めることができるという画期的な方法なのです。
そんな画期的な足さばきの方法なのに何故しない方が良いのでしょうか。その理由は次の2点。
- 技の起こりがバレバレ!
- 打突速度が遅くなる
では、具体的に見ていきましょう。
継ぎ足をすると技の起こりがバレバレ!
A君が継ぎ足を使っている場面を考えると、明らかに前述したような間合いを盗むような使い方ではありません。では、どういう感じなのでしょうか。
実は、間合いが遠くても近くても、とりあえず継ぎ足をしてから面を打つという感じになってしまっているのです。ですから、打つ前に必ず左足が動くことになります。
つまり、技の起こりがバレバレ!!
ということですね。技の起こりがわかれば相手側から見れば全く怖くありません。出端を狙うことも容易ですし、応じ技を打つことも容易です。これでは打たれてしまうのも仕方がありません。
もし、仮に打たれなかったとしても、その打突はほぼ確実に避けられることになるでしょう。それは何故か。遅いからです。
継ぎ足をすると打突速度が遅くなる!
剣道の打突動作は一拍子が理想です。しかし、打突前に継ぎ足をすることによって二拍子の打突になってしまうことがあります。どのような場合でしょうか。
小学生低学年の子供達に多いのが、次のような手順での打突です。
- 左足を引き付けながら竹刀を振りかぶる
- 右足を前に出しながら竹刀を振り下ろす
こうなると、二拍子の打突となってしまいます。一拍子の打突というのは、右足が前に出ている間に振りかぶりと振り下ろしまで行うということです。
では、一拍子の打突と二拍子の打突ではどのように違うのでしょうか。前述した通り、技の起こりがわかりやすいというのも一つですが、その原因は振りかぶった頂点(上の1と2の間)で竹刀と体が一瞬止まるということです。
動画再生中に一時停止ボタンが押したような感じでしょうか。時間の長短はありますが、確実に止まることになります。
では、どのようにすれば継ぎ足を直すことができるのかという話に進みたいのですが、その前に継ぎ足の原因について考えてみましょう。
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剣道の継ぎ足問題!その原因について考える!
では、どうして継ぎ足をしてしまうのかということについて考えてみましょう。継ぎ足の原因として考えられることはいくつかあると思いますが、私が考えるのは次の3点です。
- 右足に体重(重心)が乗っている
- 振りかぶりが大き過ぎる
- 遠い間合いから無理に打とうとしている
具体的に見ていきましょう。
継ぎ足は右足に体重が乗り過ぎ?
継ぎ足の最も大きな原因が構えの問題です。構えというのは体格や年齢、剣道スタイルによって違いがあります。しかし、基本的には右足と左足に同じように体重を乗せるのが良いとされています。
重心位置に関しては色々な書籍を読むと、前後の足で6:4や7:3と書かれていますが、基本は5:5。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
若年層に関しては脚力が強いので、重心が前寄りになる傾向がありますが、完全に右足に体重を乗せてしまうのは良くありません。極端に言うと、右足に完全に体重を乗せた状態で右足を前に出すというのは無理だからです。完全に右足ケンケン状態ですよね。
ですから、ある程度は左足に体重を乗せた状態が理想。それが7:3の3割であっても、3割の力で体全体を前に移動させることができるのなら問題ありません。
その為には左足が常に床を蹴れる状態にしておく必要があります。ですから、極端に左足の踵が高く上がっているような足の構えでは上手く力を伝えることができないので注意しましょう。左足の踵は床に着かない程度に自然に上がっているのが良いでしょう。
上げ過ぎず、床に付けない。簡単なようで難しいですね。常に意識して自分の体格、剣道スタイルに丁度良い位置を見付けましょう。しかし、問題は構えだけではありません。打突動作自体にも問題がありました。
振りかぶりはそんなに大きくなくても良い?
剣道の基本稽古では、とにかく大きく振りかぶるように言われると思います。間違いではありません。しかし、大きく振りかぶり過ぎて竹刀の剣先が下向くようなところまで振りかぶる必要はありません。
実際は大きくと言っても、自分の手の下から相手の打突部位が見える程度と言われます。つまり、左手が目の少し上くらいの位置で良いのです。
実際にやってみるとわかると思いますが、大きく速く振りかぶろうとすると上半身の力が上または後ろ方向に向かうことになります。つまり、体全体を前に押し出そうとする力の妨げになってしまうのです。
大阪の佐藤誠先生は『すりかぶり』という方法を提唱されています。大きく振りかぶるのと同時に右足を出し、そのまま打突するという方法です。初めて映像を見たときには目を疑いました。
と。しかし、実際にやってみると意外と簡単にできるものなのです。そのからくりは、ゆっくり行うということでした。
こちらの映像を見ると大きく振りかぶっている場面はありませんが、私が初めて見た映像は本当にゆっくり大きくふりかぶって打っておられました。
恐らく、慣れれば速い動作でもできるようになると思いますが、慣れない内は振りかぶりと右足を出すという動作を速く行うのは無理でしょう。
しかし、良い構えで小さ目の打ちの場合でも、いざ打とうとすると継ぎ足をしてしまう場合があります。それは間合いがわかっていないから。
剣道は間合いが大事!無理に遠いところから打とうとしていないか?
遠い間合いから打つ場合でも、正しくは右足を前に出し、左足を引き付けてから打突動作に入ります。この時に注意しなければならないのは、次の2点。
- 左足を引き付ける時に振りかぶらない
- 左足が右足を追い越さない
どうしても遠くから無理に打とうとすると上記の状態に陥ってしまいます。しかも、上記の2つが同時に起こってしまった時なんかは最悪ですね。って、私もときどきやってしまうのですが・・・
先生方は基本稽古の時に、
と言われることがあります。しかし、上記のように左足の引き付けと同時に振りかぶると、どうしても二拍子の打突になってしまうので、右足が出るタイミングで振りかぶる必要があります。
これってかなり難しいですよね。何か良い解決方法は無いものでしょうか・・・
継ぎ足を直して剣道で理想的な一拍子の打突をしよう!
では、具体的に継ぎ足を直す方法について考えてみたいのですが・・・残念ながら特効薬というのは知りません。ただ、日頃から継ぎ足をせずに打つ意識をすることで、確実に改善することは間違いありません。前述した継ぎ足の原因を踏まえ、継ぎ足をせずに打つ方法について考えると、以下のようになります。
- 正しい構えをする
- 右足に体重を乗せ過ぎない
- 左足の踵を上げ過ぎない
- 少しだけ小さめに振りかぶる
- 遠い間合いから無理に打たない
- 間合いが遠い場合は送り足で間合いを詰める
- 右足が出る時に振りかぶる
たったこれだけのことを稽古の時に意識するだけ・・・とは言え、それができないから困っているわけですよね。そういう時は一人稽古でコツコツ癖付けるのが良いでしょう。一人稽古は畳一帖分の広さがあれば十分。しかも、竹刀も木刀も持たずにできる方法です。
具体的な方法を紹介しましょう。
剣道の一人稽古で継ぎ足を直す方法
継ぎ足を直す為の一人稽古の方法は下記の通りです。
- 手刀で構える
- 振りかぶりと同時に右足を上げる(前に出す)
- 振り下ろしと同時に右足を踏み込む(左足を引き付ける)
たったこれだけ。とってもシンプルですよね。余計なことはしなくても良いです。竹刀や木刀を持つとそちらに意識が行ってしまうので、それすら不要。とにかく一拍子で行うことと、手と足の動き同時に行うということを癖付けましょう。何度も何度も繰り返し稽古することが必要です。
畳一帖分あればできると書きましたが、実際はそれでも広すぎるくらいです。何なら、歩きながらでもできますよね。
せっかくなので、ちょっとしたコツを紹介しましょう。
剣道での継ぎ足を直すコツ!入場行進をイメージしよう!
コツとしては、振りかぶり時には左手と右足がゴム紐で繋がれているようなイメージを持つことでしょうか。もう、何ならゴム紐で繋いでしまっても良いくらいです。(笑)
しかし、この動きって実は現代人の歩き方と同じですよね?
これは日本古来の常歩(なみあし・なんば)とは考え方が違うのですが、継ぎ足を改善するということを考えると非常にわかりやすいと思います。つまり、入場行進と同じ。
入場行進では右足を前に出すのと同時に左手を前に出しますよね。ですから、剣道でも左手で竹刀を振ると考えたとき、右足を前に出すのと同時に左手で竹刀を振りかぶれば良いのです。たったこれだけ。簡単ですよね。
まとめ
今日は剣道における継ぎ足という足さばきの方法について考えてみました。継ぎ足は基本的な足さばきの方法なので、決して悪いものではありません。しかし、使い方を間違えると致命傷となるので気を付けましょう。
では、もう一度記事を振り返ってみたいと思います。
継ぎ足をしながらの打突には以下のような大きな欠点がありました。
- 技の起こりがバレバレ!
- 打突速度が遅くなる
そして、継ぎ足をしてから打突する癖がついてしまっている場合の原因として考えられるのは次の3点。
- 右足に体重(重心)が乗っている
- 振りかぶりが大き過ぎる
- 遠い間合いから無理に打とうとしている
これらのことを改善するには、コツコツ一人稽古をすることをおすすめします。癖になっていしまっているので、直ぐに改善されるということはないでしょう。だからと言って諦めてはいけません。
継ぎ足をせずに打てるようになれば、試合展開は随分良くなるでしょう。
A君の今後の成長に期待します。
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