来月には県の初段から五段までの昇段審査が実施されます。来月と言っても昇段審査は2週間後という状況。つまり、稽古きる回数も数える程しかないという状況。
そんな中、今日は中学生と立ち合いの稽古をしてみました。実は昨日も中学生同士でやっていたのですが、今日は私も混じってやってみたのです。ちなみに、その中学生は女子で初めての昇段審査。勿論初段を受けます。
剣道初段の審査と言えば、メインはやはり切り返しです。綺麗な切り返しができていれば、ほぼ間違いなく合格できると思います。実際に前回の昇段審査を見ていたのですが、立ち合いの稽古時間ってとっても短時間なんですね。
つまり、審査員は切り返しの良し悪しだけでほぼ合否判定を行っているのではないかと推察できます。実際に審査員の先生に聞いたところ、「切り返しが7割」と仰っていました。
これは二段でも同じです。初段・二段の昇段審査は切り返しだけきちんと稽古していれば合格できるのです。ただ、綺麗な切り返し、審査員の求めている正しい切り返しというのはなかなか難しいもの。
そして、今日の中学生達の切り返しを見ていて・・・
ということで、今回は
切り返しの注意点!これさえできれば大丈夫!
というテーマを取り上げてみたいと思います。切り返しの注意点と言っても大したことは書いていません。恐らく、あなたがいつも指摘をされているようなことです。
ですから、再確認という意味で読んでいただければ幸いです。ちなみに、この歳で中学生に混じって立ち合いの稽古するのは体力的にかなり辛いものがありますね。
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切り返しには剣道に必要な要素が全て入っている!!
剣道の先生達はよく言いますよね。
『昔は1年間は切り返しの稽古ばっかりさせられたものです』
私は剣道を専門的に学んだことがないのでわかりませんが、剣道を専門的に学んでいた先生方は学校に入学した最初の年は切り返しのみだったそうです。凄い世界ですね。
逆に言えば、切り返しをすることで、剣道に必要な要素全てを学ぶことができるというのです。間合い、手の内、刃筋、呼吸法、足さばき。他にも気力や体力を養うのにも良いとされています。
また、切り返しは緩急をつけることで、準備運動・整理運動としても最適。ですから、あなたの道場でも稽古の最初と最後に切り返しを行うのではないでしょうか?
さて、そんな切り返しのとても参考になる動画がありましたのでご覧ください。動画は私の娘が大好きな寺本先生の素晴らしい切り返しです。そして、解説は私の大好きな栄花先生。こんな稽古会があればお金を払ってでも参加させて頂きたいです。
ところで、切り返しの左右面を打つ本数というのは元々回数に決まりはなかったようです。私が中学の時は何故か前3本、後ろ4本と習いましたが、その後に前4本、後ろ5本と言う風に教えられた記憶があります。
現在は全日本剣道連盟によって前4本、後ろ5本と統一されていますが、場合によっては本数制限が無いこともあります。
昔の切り返しというのは、相手に自分の実力がどれくらいかを推し量らせるという意味合いもあったそうです。そして、元立ちが相手の実力、体力を見極めて左右面の本数を決めていたと聞いたことがあります。
現に、私が出稽古に行ったことのある道場では八段の先生に切り返しをお願いし、何往復もさせられたことがありました。剣道は切り返しだけで多くの基本的動作を習得できるというのも納得できますね。
では、切り返しを行う時には具体的にどういう点に注意すれば良いのでしょうか?
剣道において推奨されるのが、「大」「強」「速」「軽」という4つのポイントです。これは切り返しに関しても同じことが言えます。
つまり・・・
- 「大」・・・大きく
- 「強」・・・強く
- 「速」・・・早く
- 「軽」・・・軽やかに
ということです。切り返しの場合、この4つのポイントに「刃筋正しく」「確実に」ということをプラスするとより良くなります。
それぞれの注意点を詳しく見ていきましょう。
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大きく打つ
まず、切り返しに「小さな切り返し」というものは存在しません。切り返しは必ず大きく打つことが必要となります。
中学生なんかの切り返しを見ていると、速く打ちたいが為に、小さく手首だけで竹刀を振っているような子が居ますが、良くないですよね。
手首だけで打つのではなく、肩の関節、肘の関節そして手首の関節全てを使って竹刀を振ることが大切です。
強く打つ
切り返しは打つと言うよりも切るという意識が必要かと思います。つまり、軽い打ちでは切れません。
チョン・チョンという打ちの切り返しというのは見ていても迫力がありませんよね。ですから、強く打つことが必要です。但し、強く打つと言っても力任せに打つというわけではありません。力強さは必要ですが、力任せとは少し違います。
言葉での表現は非常に難しいのですが・・・上の動画の切り返しを参考にされると良いと思います。日本一の剣士の切り返しですからね。
速く打つ
やはりスピードは大切です。力強さとも関係しますが、できることなら9本の左右面は一息で打てるくらいのスピードで打てるようになると完璧ですね。
ちなみに、私も若い頃は息継ぎせずに9本打てたのですが、最近はもうできません。スピードはそれ程衰えてはいないと思うのですが、息が上がってしまいます。(笑)
但し、速く打つことを意識するあまり、刃筋正しく打てないようであれば本末転倒です。まずは正しい軌道で竹刀を振れることが重要。それができるようになってから速さを求めましょう。
軽やかに打つ
速く打つこととも関係が深いですが、切り返しはリズミカルに打つことで、より上手に見えます。
ですから、昇級審査や昇段審査での切り返しはリズミカルにできるように稽古しましょう。
それには足さばきもとても重要ですね。足と手のリズムがバラバラ、または振りかぶりで右足を前に、振り下ろしで左足を引き付けるということができていなければリズミカルにはできないので注意してください。
確実に打つ
切り返しは基本的に竹刀で受けます。しかし、打突の位置というのはあくまでも面(左右面)です。ですから、しっかりと面の位置を打たなければなりません。
横から見ていると、打突位置が高い場合や竹刀の物打ちの部分が面の位置に届いていない場合などが見受けられます。日頃から注意していればそれ程難しいことではありませんよね。是非、今一度確認してみてくださいね。
それから、左手が左右に大きく動く人が居ますが、左手は基本的に正中線を通るように意識しなければ、刃筋正しい打突というのができません。
切り返しは45度と言われていますが、左手がずれた状態で45度に振ることは難しいでしょう。また、刃筋正しく振れない場合もあるので要注意です。
切り返しの原点
剣道における切り返しというのは江戸時代の幕末期の打ち込み稽古から分岐した稽古法なのだそうです。当時は全国的に統一された剣道というものはなく、色々な流派が存在しました。
そして、その各流派で現在の切り返しのような稽古法が存在したそうです。北辰一刀流には「切返面」、直心影流には「龍尾(返し)」という稽古法があったそうです。
「龍尾」は「首を打てば尾が来る、尾を打てば首が来るといふ意にて、右を打てば左へ返す、左を打てば右へ返す所也」と述べられています。そのような各流派の稽古法が元になり、大正時代辺りから体当たりが取り入れられるようになったということです。
つまり、現代剣道の切り返しは大正時代辺りから確立された形ということですね。そして、各流派が守り続けてきた、最も大切な稽古法だったのです。
切り返しの受け方
切り返しの元立ちは竹刀で相手の打突を受けます。しかし、これが意外と難しいのです。
一概に切り返しを竹刀で受けると言っても、相手の技量によって受け方を変える必要があると言われます。初心者と上級者では受け方が違うのです。
講習会では、
- 初心者には相手の打突を引き込むように受ける
- 上級者には相手の打突を打ち返すように受ける
と習いました。
また、先日の講習会では、受けた竹刀を返して返し胴を打つような稽古法も行ったのですが、この受け方ですと、受ける方の稽古にもなりますので、たまに取り入れると良いと思います。
実際に私は時々稽古に取り入れています。
まとめ
再度切り返しの注意点について振り返ってみましょう。
- 大きく打つ
- 強く打つ(切る)
- 早く打つ(一息で)
- 軽やかに打つ(リズミカルに)
- 確実に面の位置を打つ
上記の5点に注意すれば概ね良い切り返しができると思います。文字で見ると実に簡単に思えますが、実際は非常に難しいですね。一つ一つ確実に実践していきましょう。
速く打とうとして雑になると確実にという部分が欠如してしまいますので、最初はゆっくりでも良いので確実に面の位置を打てるようにする方が良いでしょう。
上記5点の注意点は形の上での注意点です。しかし、最も大事なことは形ではなく気迫ではないでしょうか。気迫の無い切り返しはただの運動。
剣道としての切り返しは充実した気迫が必要!!
『気迫≒声』だと考えるのが妥当でしょう。腹に力を入れて、大きな声を出して一気に打ち込みましょう。注意することは、上の動画でも解説されているように、声を切らないということです。つまり、「メン・メン・メン・・・」ではなく、「メンメンメンメン・・・」というイメージですね。
そこまでできれば、かなり良い切り返しになるでしょう!!
初段・二段の昇段審査はこれでバッチリ!!
ちなみに、知り合いの先生が六段受審に向けて毎日切り返しばかりしていただけで一発合格ができたと言っておられました。切り返しって本当に重要ですよね。ただの準備運動だと考えない方が良いと思いました。
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