剣道の目付(めつけ)という話を聞くことがありますが、なかなかできないですよね。
剣道の目付において、基本的に相手から目を離すということはありませんが、意外とこれが難しい。そして、更に遠山の目付だとか言われると、もうキャパオーバー!それ以上のこと
というわけで、今日は
剣道の目付の注意点
について考えてみたいと思います。良く聞くのが
- 遠山の目付
- 観見の目付
という二つの方法。ですから、それぞれの方法について解説しながら、実際はどうすれば良いのかということを一緒に考えてみましょう。
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剣道で重要なのは「一眼二足三胆四力」
剣道で重要なことは「一眼二足三胆四力」と言われます。つまり、最も大事なのが眼ということ。「眼」とは、相手の思考動作を見破る眼力であり洞察力のことです。
実は、眼が重要なのは剣道だけではありません。人間の情報能力というのは
- 視覚:87.0%
- 聴覚:7.0%
- 嗅覚:3.5%
- 触覚:1.5%
- 味覚:1.0%
という研究結果からもわかるように視覚から得られる情報は凄いのです。9割近い情報を視覚から得ているって凄くないですか?そう言えば、人の表情で考えていることがわかったりすることもありますよね。
「目は口ほどにものを言う」
などという言葉もあるくらい、聴覚よりも視覚が重要ということです。では、剣道においてどのようなことに注意して相手を見れば良いのでしょうか。
そこで、次の二つの目付方法について考えてみたいと思います。
- 遠山の目付
- 観見の目付
では、それぞれについて詳しく見て行きましょう。
遠山の目付とは
まずは、昇段審査の筆記試験にも良く出題される「遠山の目付」について見て行きましょう。学生時代、後輩のY口君が
って言ってましたが、全く違います。それに、今の若い人に遠山の金さんって言っても絶対にわかりませんよね。「とおやまのめつけ」ではなく「えんざんのめつけ」ですし。ちなみに、遠山の金さんはこちら。
よく考えてみれば、遠山の金さんも桜吹雪を見せるという視覚情報を利用していますが、遠山(えんざん)の目付では桜吹雪は気にならないかもしれません。
遠山(えんざん)の目付というのは、遠くの山を見るような感じで相手を見るという意味です。その時に相手の顔を中心に全体を見ましょうという訓えですね。
ですから、遠山の目付ができていれば肩の桜吹雪など気にはならないはずなのです。
剣道の試合場を考えてみましょう。開始線から中央までの距離は剣道試合審判規則によって140cmと決められています。ですから、自分から見て相手は240cm離れた場所で対峙しているということになります。
実際の打突時には一足一刀の間合いとなるので、それよりは近くです。もし、あなたが稽古中に相手の竹刀の動きを見ようと剣先に注目していた場合、相手の攻撃に対して出遅れることになるでしょう。
それは、「一眼二足三胆四力」で言うところの足が見えないからです。これは一つの例えに過ぎません。実際は相手の体全体を見て、様々な情報を視覚から得る必要があります。そうすることで、相手の動きに柔軟に対応できるようになるでしょう。
沢庵和尚は
一枚の葉にとらわれては木は見えん 一本の木にとらわれては森は見えん。 どこにも心を留めず見るともなく全体を見る。
と表現していました。(漫画『バガボンド』より抜粋)正にその通り、どこにも心を留めず全体を見ることが重要です。
では、続いて観見の目付について見て行きましょう。
観見の目付とは
宮本武蔵「五輪書」水之巻にはこのように書かれています。
眼の付け様は、大きに広く付るなり。観見の二つあり、観の目つよく、見の目よわく、遠き所を近く見、近き所を遠く見ること、兵法の専なり。
宮本武蔵「五輪書」水之巻より
この部分の前半部分から「観見の目付(かんけんのめつけ)」と言われています。
また、後半部分の「遠き所を近く見、近き所を遠く見ること」というのは遠山の目付のことではないかと思われます。
では、「観」と「見」の違いについて考えてみましょう。
辞書で調べてみると、「観」の意味はこのように書かれていました。
- よく見る。わきからながめる。
- 心中に思い浮かべて本質をさとる。
「観」という文字は、わきから眺めて物事の本質をさとるということでしょう。一方「見」の意味はどうでしょうか。
- みる。目でみわける。みえる。
- 《名・造》みて考える。自分の考え。考え方。学説。立場。
「見」は主に目でみえる事象のことを指し示しているような印象を受けます。つまり、「観の目つよく、見の目よわく」ということは、目で見える事象に惑わされずに、物事の本質をさとるという解釈ではないでしょうか。
観の目というのは非常に解り辛い部分ではありますが、相手の動きに惑わされずに心を読むようなイメージでしょう。それは、ワンピースの漫画で言うところの「見聞色の覇気」です。(わからない方ごめんなさい)
ワンピースの中でも「気のせいの延長線上に見聞色の覇気はある」と説明されていました。つまり、カンです。
- 何となく面を打ちそうな予感
- 小手狙ってそうな気がする
などです。そのカンを研ぎ澄まして行くことで「観の目」を強くすることができるのでしょう。ただし、私にはまだまだできそうにありませんが。
遠山の目付とともに身に着けたい技術です。
実は、他にも色々な目付の方法があるので簡単に紹介しておきたいと思います。
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その他の目付について
あなたも剣道の文献に目を通していると、「遠山の目付」「観見の目付」以外の目付について書かれていることに気が付くでしょう。
例えば、「剣道教室(大修館書店)」という書籍には、目付について下のように書かれていました。
- 二つの目付
- 相手の剣先と拳を見る
- 楓の目付
- 相手の小手を見る
- 谷の目付
- 相手の顔を見る
- 二星の目付
- 相手の目を見る
- 蛙の目付
- 相手の肩を見る
- 脇目付
- 相手の腰あたりに目をつけて、相手と視線を合わせない
本来なら状況によって目付を変えるべきなのかもしれないのですが、私のような未熟者にはなかなかそこまで気が回りません。それぞれにメリット・デメリットがあるのだと思いますので、是非色々試してみてください。
上記で言うと、「谷の目付」「二星の目付」「蛙の目付」などは遠山の目付と似たようなイメージなので、試すことは簡単でしょう。実際に試してみて自分に合った目付が見付かると良いかもしれませんね。
まとめ
今日は、剣道の目付ということについて考えてみました。もう一度記事を振り返ってみましょう。
人間の五感の中で約9割の情報を得ているのが視覚です。剣道においても、相手と対峙した時に視覚から様々な情報を得て、咄嗟の判断を行っています。
そして、基本的な目付の方法として、次の二つの方法がありました。
- 遠山の目付
- 観見の目付
要約すると、
- 相手の顔付近を中心に遠くの山を見るような心持ちで体全体を見る
- 相手の動きに捉われずに心の動きを読む
ということになります。非常に難しく、一朝一夕にできることではありません。日々の稽古で少しずつ試してみましょう。
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