とある稽古会で練習試合があり、参加していたうちの娘は審判をされていた先生から鍔迫り合いに関してちょっとした指導を受けていました。その試合、私も見ていたのですが、何故注意する必要があったのかと疑問だったのです。
その試合見てたけど、特に注意されるようなことしてなかったと思うけどなぁ。
ただ、打ったらあかんってだけで、何が言いたかったのか全然わからんし!!
確かに審判の先生が高体連の先生だったとすると、注意される可能性はあるかもしれません。しかし、私自身も高体連のルールを詳しく知らないので結局わからないまま・・・
というわけで、今日は
剣道の鍔迫り合いにおける注意点を詳しく見てみよう!
というテーマを取り上げてみたいと思います。剣道の鍔迫り合いには意外と細かい取り決めがあるのですが、詳しい解説ってなかなか聞けませんよね。それに、私は高体連とは全く関係が無く、高体連の審判もしたことがないので、高体連独自のルールについてもわかりません。
ですから、まずは基本的な鍔迫り合いの規則や注意点について、それから高体連独自の申し合わせ事項についても調べてみました。これを読めばあなたも明日からは正しい鍔迫り合いができるかもしれません。
また、慣用句としての鍔迫り合いの意味についても、現代剣道と照らし合わせて考えてみました。
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剣道の鍔迫り合いで反則となるケースとその注意点
まずは鍔迫り合いに関係のある反則に、どのようなものがあるのか知っておきましょう。全日本剣道連盟の剣道試合審判細則規則の第16条には、このように書かれています。
- 相手に手をかけまたは抱え込む。
- 相手の竹刀を握るまたは自分の竹刀の刃部を握る。
- 相手の竹刀を抱える。
- 相手の肩に故意に竹刀をかける。
- 倒れたとき、相手の攻撃に対応することなく、うつ伏せなどになる。
- 故意に時間の空費をする。
- 不当なつば(鍔)競り合いおよび打突をする。
上記は(5)を覗いて他は概ね鍔迫り合いの時に起こり得る反則行為ですね。全てが鍔迫り合いの時のみというわけではありませんが、鍔迫り合いに深く関係のある項目が多いでしょう。
剣道における反則行為はもっと沢山ありますので、その他の反則についてはこちらの記事を参考にしてください。
では、上記の行為は何故反則とされているのかということを考えてみたいと思います。それは、剣道の根本的な部分で相手を敬い、礼節を重んじるという部分に要約されているのではないでしょうか。
つまり、卑怯なことをせずに正々堂々と戦う。そして、正しい鍔迫り合いをすることに努めましょうということになります。では、正しい鍔迫り合いというのはどのようなことを指すのでしょうか。
剣道における正しい鍔迫り合いとは
そもそも鍔迫り合いとは、相手と接近した状態で非常に危険な状態なわけです。少しでも油断をすれば斬られてしまうという切迫した状態。
もし、防具を着用していない状態でお互いに真剣を持って鍔迫り合いの状態になったとしたら、凄く怖くないですか?ちょっとしたことで刃に触れれば斬られてしまうのです。
ちょっとイメージしてみてください。
その状態をイメージしつつ、正しい鍔迫り合いについて考えてみましょう。鍔迫り合いの主な注意点としては下記の通りです。
- 鍔と鍔を合わせる
- 竹刀の刃部に拳が当たらない
- 相手の体(肩)に竹刀を押し付けない
- 長時間の逆交差をしない
どうでしょうか?鍔迫り合いの状態で鍔と鍔が合わさっていない状態というのは、既に手を斬られているかもしれませんよね。同様に、相手の体に触れていたり、逆交差をしていたり。ちょっと考えれば駄目なことはわかるのではないでしょうか。
実は、それだけではありません。他にも打突の意志のない鍔迫り合いは「時間の空費」が該当するので反則行為となりますし、無理矢理に相手を押して相手を場外に出そうとする行為についても反則となります。
更に、
- 手元が上がった状態で鍔競り合いをしている
- 竹刀を横に倒した状態
という場合も不当な鍔迫り合いの対象となります。何れもお互いに真剣を持っていたと考えれば危険な行為だということがすぐに理解できるのではないでしょうか。
これ、小学生低学年の試合で良く見る光景ですよね。そして、審判員は適切に指導されている光景も良く見ますが、恐らく小さい子供達って、気持ちが高ぶってあんな風になってしまうのでしょうね。
但し、これらの状態が短時間で解消されるようなら、それ程問題視はされず、試合でも反則を取られることはないと思われます。問題となるのは、その状態が解消されずに長時間となってしまった場合や何度も繰り返される場合です。
上記が鍔迫り合いの基本的なルールです。ここまでの内容を考えてみても、娘が注意された理由は全く思い浮かびません。では、何故審判の先生に注意されたのでしょうか?
恐らく、高体連独自のルールで相手が離れようとした瞬間に打突したのではないかと。
娘も来年からは高校生です。ということで、高体連のルールを予習してみたいと思います。
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高体連の鍔迫り合いルール!このポイントだけ知っておこう!
まず、高体連の鍔迫り合い関連の解説動画がありますので、こちらを見てみましょう。
動画を簡単にまとめると、以下の2つのポイントになります。
- 鍔迫り合いの状態から10秒以内に技を出すか鍔迫り合いを解消しなければならない
- 審判員は『不当な鍔迫り合い』『時間空費』の反則または『分れ』を見極める
一番難しいと感じたのは、鍔迫り合いの解消です。動画の中では説明がなかったのですが、
- まさに分かれようとする瞬間に出した技は有効打突となり得る。
- 分かれる途中の近間、中間で打突した場合は反則とする。
という違いを審判員が見極めなければなりません。簡単そうに思えますが、実際の試合中にその見極めをすることは非常に難しいのではないでしょうか。また、鍔迫り合いが解消されたとみなされるのは、中段に構え合った双方の竹刀が離れた位置です。
ですから、その位置まで離れる前に打突をしたり、上段に構えた場合も反則ということになります。難しいですね。
また、「分かれ際」と「分かれる途中」の判断は審判員が経験則と照らし合わせて見極めなければならないということも難しいのではないでしょうか。ですから、経験の浅い審判員には見極めは不可能ということになるでしょう。
もう一度イメージしてみましょう。反則となるのは、相互に呼吸を合わせ分かれる途中で出された技。ですから、相手の選手が
って心の中で思っていたとしても、私のような鈍感な人は気付きません。そして、その瞬間に打っても反則にはならないのですが、ちょっとでも出遅れて打ったら反則になってしまいます。
逆に、
と、気を抜いた瞬間に打たれても反則にはならないわけです。難しいですね。
また、勘違いしていたこともありました。相手が打った引き技が不十分だった時や、自分が避けた後に追い込んで打つということも反則行為になるのかと思っていたのですが、そうではないようです。追い込んで打っても反則にはならないので、どんどん追い込みましょう!
ところで、『鍔迫り合い』という言葉の語源はもちろん、刀の鍔と鍔が迫り合っている状態ですが、慣用句としても使われています。実際にはどのような使い方をするのでしょうか。
慣用句としての『鍔迫り合い』!どんな意味?
『三省堂 大辞林』によると、鍔迫り合いの意味は下記のように書かれていました。
- 互いに打ち合った刀を鍔で受け止め、押し合うこと。
- 激しく勝負を争うこと。
例文としては、こんな感じです。
- 優勝を目指して両チームが鍔迫り合いを演じている。
- 実力が拮抗しているので鍔迫り合いのような対戦だ。
ですから、本来は剣道においても鍔迫り合いにおいて激しい勝負が繰り広げられるべきなのだと思います。しかしながら、現代剣道においては時間空費の意味合いも大きくなってきていることから、なるべく鍔迫り合いで試合時間を消費しないということが求められています。
本当に実力が拮抗して両者一歩も引かないという状況ならどれだけ鍔迫り合いをしても良いのかもしれませんね。
まとめ
今日は、剣道の試合でよく反則のある鍔迫り合いについての注意点などを再確認してみました。更に、高体連独自のルールについても勉強しました。
鍔迫り合いに関しては、昇段審査の学科試験でも『剣道における正しい鍔迫り合いと注意点』ということでよく出題されるのでポイントを押えておくと良いかもしれませんね。
剣道の試合では鍔迫り合いが非常に多く、反則に関しても厳しくなってきています。特に
- 不当な鍔迫り合い
- 故意の時間空費
という2点においては、審判講習会でも話題になることが多いと思います。また、高体連では独自のルールが設けられ、更に厳しくなっています。しかし、これには高体連での剣道の試合において鍔迫り合いの割合が非常に増えてきたことを懸念する流れから来たものです。
剣道の醍醐味は一足一刀からの打突。高校剣道では勝負に拘るあまり、一足一刀の攻め合いよりも、鍔迫り合いによる打たれない試合展開が増えてしまったのが根本原因です。
だからと言って、鍔迫り合いからの打突が駄目と言うわけではありません。鍔迫り合いでも正しい攻めを行い、キレのある打突ができるようになれると良いですね。
鍔迫り合いからの引き技に関しては、こちらの記事を参考にしてください。
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